高松高裁判例 2007/9/23(日) 午前 1:48

 
 先日ちらりとご紹介した高知県の女性暴行事件。9月14日に高松高裁で「逆転無罪」の判決が下されました。

 以下9月15日高知新聞の記事です。

 交際女性への婦女暴行致傷罪などに問われた香南市、旧香我美町産業建設課長のA被告(54)=休職処分中=の控訴審判決が十四日、高松高裁で開かれた。

 柴田秀樹裁判長は懲役五年とした一審・高知地裁判決を破棄し、二件の暴行について無罪を言い渡した。

 同被告側は女性との性的関係を認めた上で「合意があった」と無罪を主張し、起訴された二件が強制による暴行だったかどうかが争われた。

 柴田裁判長は、最初の暴行日とされる十七年十月十八日以降も女性が同被告と性的関係を持ち、二回目の同二十七日以降も県外にドライブに行ったり、プレゼントを渡していた点を重視。

 こうした状況を踏まえて「女性は被告人と不倫関係を続けていたのであり、日常的に暴力で性的関係を強要するような関係にはなかった。(暴行を加えられたとする)女性の証言には多大な疑問がある」と信用性を否定し、二件の婦女暴行をいずれも無罪とした。

 一方、十七年十月に女性の首などに一カ月のけがを負わせた傷害罪の一部と、女性の車への器物損壊罪は認め、罰金五十万円とした。

 被告側は十七年十二月の逮捕時から一貫して無罪を主張。

 今年二月の一審判決は「一般的には婦女暴行罪の成立に疑問がある」としながらも、

 被害女性の証言を「供述の根幹は一致しており信用できる」と重視。

 暴行日以降の性的関係やドライブについても「不倫関係がこじれた中で起きたことで不自然ではない」とし、暴行を否定する証拠だとする被告側主張を退けていた。

 判決について、女性は「二人の間の長い経緯を考慮に入れず、一審とは違い、誤った事実認定をしている。長期間、彼の言動で周りの人が受けた苦痛を考えると、この判決が正しいとは思えません」と話した。

  * 支援者「当然の判決」

 「どうもありがとうございました」。婦女暴行罪での無罪判決を受けたAさん(54)は閉廷後、傍聴席の支援者らに感謝の言葉を述べた。

 「今日、この日が想像できなかった。冤罪(えんざい)で無実をはらすというのは難しかった」

 判決後の会見で、Aさんはこれまでの思いを打ち明けた。「身に覚えのない話。逮捕は青天のへきれきだった。事実に基づかない逮捕、起訴。一審判決にはかなり落ち込み、苦しかった」

 十七年十二月に逮捕されてから一年近く接見が禁じられ、手紙のやりとりもできなかった。「逮捕されると本当に何もできんというのが実感」と話した。

 同席した稲田知江子弁護士は「当然の判決。一審は犯罪事実に関し、たたかれた、けられたという犯罪の要件事実だけ見ていた。(暴行されたと主張する日以降も)女性が『うちに来て』とメールを送ったことなど、細かい事実を無視し大ざっぱだった」と指摘。

「一審と証拠など判断材料はほぼ同じ。それが百八十度ひっくり返った。一審は何をしていたのか」

と語気を強めた。

 「家族のことを思うとつらかった」。Aさんは時折、涙を浮かべてこれまでの思いを吐露し、「親せきが経済的に支えてくれた。同僚や友人も面会に来てくれ、励まされた。周囲の支えでやってこれた」と語った。

 この日はAさんを励ましてきた知人らも傍聴。一審からすべての公判を傍聴してきた元同僚は判決後、「よく頑張った」とAさんに声を掛け、別の知人は「当然の判決。こんな問題でこれだけ時間がかかり、(Aさんが)払った代償は大きい」と話した。

  ▼誠に遺憾  高松高検の高橋勝次席検事の話

 誠に遺憾。判決内容を十分検討し、適切に対処したい。

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