6月6日朝日新聞高知版記事」 2007/9/30(日) 午前 0:59

 朝日新聞高知版6月6日記事です



 春野町の国道で昨年3月、県警交通機動隊の白バイとスクールバスが衝突、同隊員(当時26)が死亡した事故で、スクールバスを運転していて業務上過失致死の罪に問われた無職片岡晴彦被告(56)=仁淀川町森=の判決公判が7日、高知地裁(片多康裁判官)で開かれる。検察側は、「被告に安全不確認の過失がある」として禁固1年8カ月を求刑。一方、被告側は、「事故の原因は白バイのスピードの出し過ぎと前方不注視」と無罪を主張し、「県警は同僚をかばうために事実を捏造(ねつぞう)した」と捜査に対する疑問点も訴えている。(中川壮)




 事故は春野町弘岡中の国道56号で、06年3月3日午後2時35分ごろ発生した。県警交通機動隊の白バイと仁淀川町立仁淀中学校の生徒23人らを乗せたバスが衝突。土佐署は片岡被告を業務上過失傷害の疑いで現行犯逮捕し、2日後に釈放。高知地検が12月、同被告を業務上過失致死罪で在宅起訴した。



 現場は片側2車線のほぼ直線道路で、中央分離帯が途切れた場所。バスは国道脇のレストランの駐車場から国道に出て、右折で反対車線に入ろうとしていた。



 検察側によると、バスは時速約5〜10キロで走行。白バイに衝突し、急停車したという。この急ブレーキで、バス前輪のスリップ跡(右1・0メートル、左1・2メートル)が道路についたとする。衝突時の白バイの速度は時速約60キロと断定。現場近くを走行中に事故を目撃したという別の白バイ隊員の証言に基づく。「白バイ隊員は訓練の結果、前から走ってくる車の速度も目測でほぼ正確に言い当てられる」としている。



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 一方、被告側の主張は、「白バイと衝突した時、バスは止まっていた」と真っ向から対立する。バスは中央分離帯付近で一時停止をして車の流れがとぎれるのを待っていたとしている。衝突時の白バイの速度は時速約100キロと推定。事故直前にこの白バイの後ろで車を運転していたという男性の証言に基づいている。



 また、「時速5〜10キロで走行中のバスが急停車したとしても、乾燥した舗装路面に1・0〜1・2メートルものスリップ跡が付くことはない」などとして、スリップ跡は県警が事故直後に捏造したものと主張。片岡被告は取材に対し「スリップ跡とされる写真は、06年11月に高知地検の調べを受けたとき初めて見せられた」と話している。



 この主張に対して、検察側は「報道陣や見物人のいる中で、スリップ跡や擦過跡を捏造できるはずもなく、荒唐無稽(こうとうむけい)な内容」などと反論する。



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 これまでの公判では、捜査過程について被告側から問題点や疑問点が提示されている。



 片岡被告は現行犯逮捕された後、現場検証に立ち会うことなく土佐署に連行された。約1時間後に現場に戻ってきたが、すでにバスや白バイは現場から動かされた後だったという。同被告は車に乗ったままで、県警が示した衝突地点などを後部座席から指さした。



 被告側は「容疑者を立ち会わせるという原則に反した全く異常な現場検証」と強く批判。検察側は「現場にはカメラを持った報道関係者がいたため、被告の人権を配慮して車から降ろさなかった」と弁明する。



 しかし被告側は「最も守らなければならないのは、被告の防御権を十分保障し無実の罪を負わせないという捜査手続き上の人権」だと主張する。



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 1月に始まった公判は計6回開かれた。検察側からは、事故を目撃した白バイ隊員や現場検証をした警察官らが、被告側からは、バスのすぐ後ろで車を運転していた仁淀中学校長やバスに乗っていた同校教諭(当時)らが、それぞれの証人として出廷した。



 片岡被告は最終陳述で、裁判官に向かってこう述べた。「警察官が捏造と言うか理不尽な行動に出て、恐ろしさを感じた。今も、冤罪事件が現に争われていることに恐怖を覚えている」



以上朝日新聞高知版6/6付け朝刊記事でした。

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